「不変と革新」

特別インタビュー:日本経済大学教授 後藤俊夫氏

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長寿企業 短期的利益求めず

日本経済大学教授 後藤俊夫氏
創業100年以上といったいわゆる長寿企業は世界的にみて日本に多く存在するといわれる。しかし、世界各国の長寿企業数を調べたデータはこれまでなかった。そうした中、日本経済大学の後藤俊夫経営学部教授・学部長は世界初とみられる調査をまとめた。それによると世界の「超100年企業」は6万2780社にのぼり、136の国・地域に分布する。長寿企業の研究に取り組み続ける後藤教授に、その意義と長寿企業の理念に学ぶべき点などを聞いた。(編集委員・名取貴)

―長寿企業について調査研究を続けています。

「以前世界の『超200年』の企業について調査し、やはり日本に多く存在することがわかった。しかし200年と100年では性格が違う。そこで15年にわたり100年企業を私が中心となり1社ごと追跡した。インターネットや商業データベースが充実してきたことも分析の追い風となった」


―200年、100年とも日本が「1位」ですが、100年では2位に米国が入っています。

超100年企業の国別企業数トップ10
「日本に2万5000社、ついで米国に1万1000社以上あることに驚いた。200年企業を調べた際、2位はドイツだった。各国の経済規模から見れば米国に多いのも当然だし、19世紀の西部開拓期以降数多くの企業が誕生したと考えると100年以上200年未満の企業が多いことも納得する。調べると優れた経営を行う長寿企業もたくさんある。金融に見られるように、米国には短期的利益を追求する企業が多いと考えがちだが『良いアメリカ』も確かに存在するということだ」
 
「経済規模から考えると5位のスイスも長寿企業の比率は高い。各国の長寿企業のあり方についてはこれからさらに分析を深めたい」

 

―長寿企業の研究に取り組む目的とは。

「この研究には21世紀的意義がある。今、新しい経営モデルを世界が求めている。特に米国はそうだろう。そして企業が何のために存在するのか、といった問いに日本はいくつかの解を持っている。近江商人から伝わる『三方よし』といった言葉は、企業が社会のために存在し、社会の公器であることを示すもの。また18世紀・享保年間に活躍した石田梅岩の思想をはじめ、日本人は公欲のために奉仕することを重んじてきた」
 
「企業にとって一番大切なのは、何のために経営しているかという経営理念だ。高度成長や金融資本主義で忘れられそうになった経営の原点が長寿企業にはある。近年公益資本主義といったことも主張されているが、日本にはそんなことを言われるまでもなく、無意識のうちに優れた経営理念を持って長らく続いてきた企業が、例えば2万5000社あると考えれば良い。その中には多くのファミリービジネス企業も存在する」

―長寿企業の優れた点とは何ですか。

「21世紀の世界のキーワードの一つは『エコ』。市民には浸透しつつあるが、経営にも必要だ。身の丈経営の日本の長寿企業は短期的な利益を求めるのでなく中長期の発展を目指す。人材や設備投資、在庫についても『ムダ遣い』をしない。ステークホルダーと良き関係を長きにわたり続ける。これは究極のエコロジーではないか。こうした経営のあり方は日本が誇るべきもので、今や世界から求められている」


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