「不変と革新」

日本濾水機工業

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社是共有し理念を浸透

事業説明会で企業理念を説明する5代目の橋本美奈子社長

1枚の古い紙

日本濾水機工業(横浜市南区)の橋本美奈子社長は社長室にある2代目社長の橋本東氏が使っていた机を整理していたとき、引き出しの中から1枚の古い紙を見つけた。そこには社是、経営方針、社風について記されていた。

社是は「高度の精密濾過を目的とし、他の追従を許さず常に先鞭(せんべん)進する」に始まり、「社会文化の向上に寄与するを目的とする」「研究に励み生産と販売には誠意をモットーとする」「従業員の幸福の増進と生活の安定をはかる」と続く。
 
同社は1918年(大正7) に橋本精士氏が素焼濾過筒「セラポア」の製造方法を発明して創業。以来、セラポアを用いた濾過機や水処理装置の製造・販売、用水処理プラントエンジニアリングを手がけている。東氏は美奈子社長の祖父。長年にわたって同社の成長を支えた。「創業者はモノづくりに興味がある技術者だったが、2代目は会社としての形を築き上げた経営者」(美奈子社長)だった。
 
ただ、美奈子社長から見た同社は、社員一人ひとりが自分の仕事に責任感を持って取り組む一方、「協調してなにかをやるという意識は弱くなっていた」。そう感じていたときに見つけたのが2代目が書き記した社是だった。偶然発見するまでは企業理念に触れる機会も少なかったが、改めて日本濾水機工業がどういった会社かを見直すきっかけになった。

意識のベクトル

そこで、14年5月に5代目社長に就任すると「もう一度社是を全社員で共有し、みんなの意識のベクトルを合わせよう」と理念の浸透に着手した。社員研修や事業計画を発表する場を活用して積極的に伝えるようにしたほか、自社のホームページをリニューアルし、社是とカンパニーコンセプトを掲載した。ここ数年の間に20代の若手社員が増え、社員の平均年齢が50代から40代まで若返っていたため、協調性を養うことで全社の人材育成や技能伝承の取り組みを加速する必要もあった。
 
社是には五つ目に「堅実、且つ永続的な経営とする」と記されている。日本濾水機工業は18年に創業100年を迎える。ここまで事業を続けられた理由について、美奈子社長は「信頼性」と断言する。技術を応用して多角化を図るチャンスはあったが、産業向けの水を作ることにこだわってきた。顧客の多くは製薬や飲料、化粧品メーカー。人の命にも関わるだけに高い品質が求められるが、半世紀以上にわたって製品を納め続けている企業もある。「技術はまねできても、信頼感はまねできない」。水の中から特定のものを取り出す専門技術に加え、培ってきた信頼が高い参入障壁になっている。

200周年に向けて

美奈子社長は「100年を迎えるのは私の力で成し遂げたことではない。自分がやるべきは200周年に向けた礎を築くこと。入社以来、会社への愛着は大きくなり続けている」と話す。
 
手書きの社是は社長室に掲げた。200年目に向けても指針となる。

企業概要

素焼きの濾過筒の製造方法を開発し、生産・販売を始めた。セラポアは自然界に存在する天然の珪藻土を主成分に製造され、目詰まりが発生した際には表面をブラッシングすることで濾過性能が回復する。戦時中は旧陸軍の給水向けに製造し、戦後には厚生省(現厚生労働省)から災害用濾過機に指定されて各都道府県に納めた経緯がある。68年から13年まで10回連続で優良申告法人に選定されたほか、子供のための福祉施策貢献、地域祭礼や団体への寄付金など、積極的に地域での貢献活動を展開している。


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