「不変と革新」

岩井の胡麻油

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危機感バネに風土改革

危機感バネに風土改革

新しい歴史を

現社長の岩井徹太郎氏が8代目に就任した2005年。創業150年を誇る岩井の胡麻油は苦境に立たされていた。中国のゴマ消費量が拡大し、ゴマの国際価格が大幅に上昇。原料の大半を輸入に頼る日本メーカーは収益が圧迫され、業績が厳しくなった。
 
「旧体制のあしき習慣を捨て、良いところだけを残す。基本を見直して新しい歴史をつくる」。危機感を抱いた岩井社長は、すぐに企業風土改革に着手した。伊勢丹に勤務していた経験を生かし、伝統を守りつつ、ブランディングの再構築や社員の意識改革に取りかかった。
 
この際、岩井社長が強く意識したのが社内のチームワーク。工場は搾油や焙煎(ばいせん)といった工程ごとに棟が分かれ、工程間の意思疎通はほとんどなかった。あいさつもしない従業員がいることを問題視した。
 
あらためて基本理念や企業経営、個人活動の指針からなる経営理念を策定。社員の教育、品質管理から礼儀まできめ細かく定めた。
 
新しい経営理念は「ゴマ、ゴマ油を通して『食の安全・安心』『健康でおいしく高品質な商品』を提供することにより、食文化の向上に貢献する」とする基本理念に加えて、「明るい心」「素直な心」といった従業員の行動指針を示す「七つの心」を盛り込んだ。

安全・安心を提供

安全・安心なゴマ油を提供することを信念にして焙煎、圧搾、濾過という伝統製法にこだわることは、創業以来変わらない理念。これを初めて明文化した。
 
05年の新工場移転後は、朝礼で経営理念を唱和するようにした。マナーについて勉強会や自分の担当業務を説明するための研修も開いた。近隣住民や小学校などの見学を受け入れ、地域に溶け込んだ企業を目指した。その結果、従業員の意識が高まり、仕事に取り組む姿勢やチームワークなどがみるみる向上した。
 
同社製のゴマ油の価格は、他社製品に比べて少し高価。化学的な製法や安定剤などの添加物を使用しない上、焙煎や搾油などの工程をコンピューター制御しつつも、味を決める見極めの部分は職人が微妙に調整する。溶剤を使って無理に油を取り出さないため、歩留まりは高くないが、伝統製法を変える考えはない。
 
岩井社長は「価格が高くても、実際に試食してもらうと良さを十分にわかってもらえる」と考えてそれまで弱かった家庭用の販売を強化。「岩井の青缶」を百貨店や高級スーパーで欠かせない商品に育成し、家庭用のシェアを10%近くに引き上げた。今後は関西方面でも積極展開し「(シェアを)30%に高める」考えだ。

9期連続で黒字

原料高や円安の影響で事業環境は依然として厳しい。それでも岩井社長の就任後は9期連続で黒字を達成。「ゴマ油に徹しているからこそ続けてこられた。これからも軸足をぶらさずに事業展開する」と言い切る。
 
原料や製法へのこだわりに、問屋や消費者の声を加えることで新たな成長期を迎えようとしている。

企業概要

1857年(安政4)に岩井藤七氏が千葉県佐倉市で搾油業を手がけたのがきっかけ。1893年(明26)には3代目が横浜市神奈川区御殿町に搾油工場を設立した。以来、青木町、星野町、そして現在の橋本町と120年にわたって横浜市でゴマ油を生産し続けている。最大の特徴は伝統的な工法を用いた製造方法と、職人の匠(たくみ)の技で昔ながらの風味や香りを保っていること。日本で初めて黒胡麻油を売り出すなど、新しい商品づくりにもチャレンジしている。


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