「不変と革新」

五十鈴

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「自治」で全員参画経営

各職場では、グループの理念を具体化するためのワークショップが活発に開かれている

理念の重要性

「重要なのは社訓の唱和や、経営理念の暗記ではない。そうしたモノの見方・考え方を身につけること」―。創業67年を迎えた鋼材の加工販売(コイルセンター)を手がける五十鈴の鈴木貴士社長は、改めて理念の重要性を強調する。この考えを突き詰めた結果、五十鈴の本社に調達や営業はもとより経理や人事、総務といった部署がなくなった。各職場が意志と責任を持って生み出す力を引き出そうと、分社したためだ。「統治ではなく自治」という全員参画経営が息づいている。
 
鈴木社長は2代目。三菱商事を経て、30歳で家業に入った。当時の鈴木實社長(現会長)の大号令を受け、コイルセンターとしての存在感を高めていた頃だ。だが、現場に身を投じると、業績は伸びていたが「社内の統一感は乏しく、組織として弱いと思った」。


『三綱領』の風土

軸となる何かが足りない―。ビジネス書を読み漁り、これはと思うものを次々と試したが、しっくりしない。模索する中で注目したのが経営理念だ。「そう言えば"組織の三菱"と言われた古巣には『三綱領』の風土があった。それならウチにもある」と気がついた。
 
五十鈴には創業者が定めた社訓がある。「お得意さんに誠意をつくそう」「仕事は實(み)を入れてやろう」「何でもみんなで話し合おう」の3カ条。鈴木社長は「良いことを言っている」と共感した。ただ、唱和するようにしたものの当時は「字面を追うだけだった」と振り返る。この時の思いから、社長就任時の基本方針として「社訓の実践」を掲げた。
 
同時に「事業環境や組織の進化に応じ、若手も役員も皆で社訓を解釈し直すことにした」。例えば「お得意さんに誠意をつくそう」は「顧客満足」に。値引きが当たり前になっていた当時の慣習を否定し「付加価値の提供」への転換を決めた。
 
「本社の権力をそぎ落とす」挑戦も始めた。本社と拠点の関係では、無意識に上下の意識が生じる。「内線電話をかける時、昔は『本社経理の○○ですが』と権威的だった」という。分社を進め、各社の経営管理チームにかじ取りを任せる制度に改めた。内線電話は「『お世話になっております。五十鈴マネジメントサービスの○○です』に変わった」と効果を説明する。

価値創出

こうした取り組みは企業の変革を促した。五十鈴の本業は、高炉や電炉から仕入れた鋼帯を加工・販売するコイルセンター。しかし、現在、描く青写真は「バリューセンター」だ。「大量の鋼帯をさばく製鉄所の下工程との意識を捨てて、サービスや価値を提供するお客さまの上工程になる」との考え方だ。
 
今の五十鈴はコイルセンター、物流、建設のほか、総務・経理や生産技術、情報システムなどを担うソリューションの4部門で構成される。「本業で培った暗黙知を形式知にして展開。本社は理念により結束を促す。これが社訓の示す姿」という。グループ、組織、人材の価値創出を目指し、各職場では無数のワークショップが開かれている。

企業概要

1947年、寿産業として鋼材販売を開始、52年に五十鈴鋼材を設立。53年には不二商事(現三菱商事)の特約店となり、薄板販売の専業に。60年に加工業務を開始、その後三菱商事との共同出資で五十鈴スチールセンターを立ち上げ、加工販売体制を確立した。92年に社名を五十鈴に改めた。14年3月期の連結売上高予想は1135億円、経常利益は18億円。鋼材販売量は112万トンを見込む。


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