「不変と革新」

梅栄堂

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「真の本物志向」で350年

創業地に立つ本社1階ショールームには明治・大正期の文人画家、富岡鉄斎による梅栄堂あての薫香の掛け軸がある

天然香料

「天然香料にこだわる」―。梅栄堂が創業から350年以上に渡って守り続けている製品づくりの精神だ。大阪堺の伝統産業、かつて日本一の生産量を誇った堺の線香は太平洋戦争の戦災や経営難、後継者不足で製造業者が減り続けてきた。さらに現代では安価な海外製品の流入などでより激しい競争にさらされている。しかし原料を大切にする精神、いわば「真の本物志向」が厳しい環境下でも同社を別格の存在にしてきた。
 
梅栄堂は高級品を主流にする。低価格帯の普及品でも量販店などで売られる製品の2・5―3倍の価格設定。高い製品では一束(20本程度)6万円もの製品もある。「天然香料の付加価値で売っている」と中田信浩社長。国内に流通する80―90%の線香に人工香料が使われる中で「香を楽しむ趣味性が高い分野のユーザーには、今も天然香料の高級品が受け入れられている」と話す。
 
同社の年間売上高は1993年をピークに20%程度下がったが、この10年間は横ばいで約10億円。全体量は減っているものの、より高価な製品が売れるようになったという。中田社長は「高級品ですみ分けができている」と話す。
 
天然原料の相場はこれまで天井知らずで上がり続けてきた。沈香(じんこう)や伽羅(きゃら)などの希少原料の価格はこの数年で7、8倍に。背景には新興国の富裕層拡大による需要の急増がある。「中国では一気に5000軒の線香屋が乱立した」(中田社長)。インドではこれまで輸出品だった香木が国内消費されるようになった。これに伴い、投機目的の買い占めも横行し、「調達ルートの少ない日本には原料が入りにくくなった。


原料にこだわり

線香業界では20年ほど前から機械化が進み、調合から手作業で作り上げる超高級品を除けば、職人が携わる工程は減った。生産コストも下がったが、原料価格の高騰はこうした努力を無にする勢いで進んできた。それでも同社は天然原料にこだわり、品質を維持。調達コストの上昇分は製品価格に転嫁した。
 
同社製品のユーザーは50歳以上が多い。「この購買層は値上げしても付いてきてくれる」と中田社長。品質を落として価格を守るメーカーもあるが、値上げに踏み切っても同社製品の売り上げは下がらなかった。

販路開拓

国内の高級線香の市場規模は約30億円。ただ飽和状態にあり、同社は高級線香とは違った分野にも挑戦している。この一つがコーヒーや緑茶の香りのするアロマ系の線香。4年前に発売し、大手雑貨店などの新しい販路の開拓につながった。さらに海外市場を目指し、08年から毎年2回、ニューヨークのギフトショーにも出展している。同社製品を扱いたいという話も少しずつ入るようになり、市場の拡大に期待がかかっている。
 
線香のベースの調合は門外不出。梅栄堂の調合も親族の数人で守ってきた。「古くは書物。今はUSBメモリーで伝えている」と中田社長は笑う。変わらない伝統は革新の中に生きている。

企業概要

梅栄堂の創業は1657年。中世の貿易港として栄えた堺で、漢方薬関連の貿易商から線香などを扱い始めた。当時の屋号は「沈香屋作兵衛」を略した「沈作」。「沈香屋」は薬種問屋の中で香を専門に扱う業者にだけ名乗ることが許された名称だった。中田信浩社長は16代目で時代に合わせたチャレンジを続ける。13年12月中旬には創業356周年を記念し、フェラーリなどのデザインで知られる奥山清行氏とコラボレーションした南部鉄器と有田焼の高級線香立てをそれぞれ発売。


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