「不変と革新」

坂口電熱

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"ご恩返し"精神で経営

開設当時の秋葉原本店(1958年頃)
蜂谷真弓社長、坂口美代子会長、坂口功副会長がテープにはさみを入れると、関係者から拍手が沸き起こった。9月、坂口電熱の秋葉原本店リニューアルオープン式典の一幕。電熱技術を駆使した産業用ヒーターや温度センサーで地歩を築き、2013年に創業90周年を迎えた。

身に刻み込む

「聖賢の教学に則り社業を通して国家社会の進化発展と人類の安心平和幸福の実現に貢献せんことを念願とする」。従業員はこの社是を毎日の朝礼で唱和する。新入社員は1カ月間、日報に書き写す。蜂谷社長の祖父で創業者の坂口太一氏が掲げた理念は飾っておくものではなく、身に刻み込むものだ。
 
坂口電熱の設立前、毛織物のラシャ問屋を営んでいた太一氏は、仕立屋が炭火式のアイロンかけに苦労していることを知り、「手助けしたい」と工業用電気アイロンを考案した。これが事業の原点。「私たちは生かされている。そのおかげで今日がある。従って企業経営は社会の恩に報いるものである」。太一氏は"ご恩返し経営"の精神で、顧客と社会の役に立つモノを作り続けてきた。


ニーズとらえる

秋葉原の現在地に本店を開設したのは58年。蜂谷社長は「当時は裏に青果市場があり、苗床を温めるヒーターが評判になった。農家が売上金を持って店舗に来たそうだ」とする。時代のニーズをとらえる資質は、太一氏の娘で前社長の美代子会長、孫娘で三代目の蜂谷社長に受け継がれている。86年に千葉県佐倉市にR&Dセンターを開設し、国産ロケット「H2A」などに電熱部材を提供してきた。06年には世界に先駆けてレーザー平面瞬間加熱装置を開発した。身近に必要な製品がそろう場として店舗営業も続ける。「流行に左右されない基幹産業に貢献しながら、直近の需要もとらえるバランス感覚が大切」と説く。

社外交流も活発

持続可能な成長を目指す世界的枠組みである「国連グローバル・コンパクト」に署名し、社外交流も活発だ。また美代子会長と功副会長が創設した坂口国際育英奨学財団は13年に設立25年を迎えた。この間、私費外国人留学生への援助を続けている。「本当の社会貢献はできる時だけするものではなく、こつこつと続けることに意味がある。そして理念を実践するには、事業基盤を盤石にする必要がある」と強調する。
 
こうした考えに基づき13年に社内研修会「PUT(パワーアップトレーニング)」を初開催した。全国の設計・開発・生産・営業担当を集めて成功事例133件に投票し、役員賞などを表彰した。「アイデアを共有するだけではなく、売上高には表れない努力を認め合えるようになった」と手応えを感じている。
 
「あってよかったと思ってもらえる会社でありたい。熱や電気はあらゆる研究分野に不可欠な要素だ。100年、200年、300年と続く経営を目指す」。蜂谷社長はこう言い切る。

企業概要

1923年(大12)の設立以来、熱エネルギー変換技術を生かした産業用装置と各種材料を手がける。東京・秋葉原の電気街に50年以上店舗を構える一方、大型プロジェクトに参画してきた。国内外に顧客を持ち、品目は300万点を超える。08年に蜂谷真弓氏が3代目社長に就任。近年は特に真空光学化学領域の先端研究に電熱技術を提供している。05年に2代目社長の坂口美代子氏が「第3回渋沢栄一賞」を受賞。09年には企業として「第7回勇気ある経営大賞」大賞を受賞した。


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