「不変と革新」

鈴廣蒲鉾本店

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生命のうつしかえに使命

社是と企業理念を仕事の仕方に落とし込んだ、全社員に配布するマニュアル「鈴廣流 仕事の仕方」

老舗にあらず

「老舗にあって老舗にあらず」。かまぼこを中心とした食品を扱う鈴廣蒲鉾本店は1988年1月、この言葉を社是として公表した。それまで社是はなく、同社にとって危機的な状況を迎えていた中での表明だった。
 
というのも87年に社長の鈴木昭三氏、会長の鈴木廣吉氏が相次いで病気で亡くなったからだ。職人気質ながらも進取の気性を持ち合わせ、戦前・戦後から発展の礎を築いた廣吉氏。本社・工場の移転をはじめとして経営の近代化を進めていた昭三氏。2人の"大黒柱"を一気に失い、会社の行く末に暗雲が漂った。
 
跡を継いだのが昭三氏の妻で、廣吉氏の娘である現会長の智恵子氏。一連の仏事が終わった後、廣吉氏がメモに「老舗にあって老舗にあらず」と書き残してあったことを、智恵子氏の長男で現社長の博晶氏から知らされた。
 
故人の意思を継ぐとともに同社の進むべき道を確認し、それを表す言葉として社是に定めた。

変革もいとわず

社是には二つの意味が込められている。「老舗にあって」には、時代が変わっても絶対に変えてはいけないものを表す。すなわち「お客さまに真正面から向き合う姿勢」(鈴木悌介副社長)だ。もう一つの「老舗にあらず」は、仕事のやり方など「変えるべきものは勇気を持って変える」(同)といった自己変革に向けた姿勢を意味する。
 
社是のほか企業理念も定めている。それは「食するとは、生命(いのち)をいただき、生命をうつしかえること。その一翼を担うのが私たちの仕事。かけがえのない地球の中で、この役割こそ我が天職」。すなわち、人が動植物を食べる行為は、生命をいただくということ。生命を人の命に移し替える行為を手伝うという同社の使命感を表す。
 
そのため「食べ物に余計なことをしてはいけない」(同)と考え、製品に保存料やうま味調味料、添加物を加えていない。「食べ物によって無数の細胞からなる人間の体がつくられる。食に関わる仕事の責任は大きい」(同)。

全社員に浸透

社是や企業理念は掃除やあいさつをはじめとした「日々の仕事に表れる」(同)とし、絶えず社内にメッセージを送り浸透させている。例えば、8月末には新年度が始まる9月に向け、全社員を集めて方針徹底会を開催。毎月の給料日には明細とともに、会長、社長、副社長がその時々の話題をまとめたエッセーを渡している。
 
また、全社員にマニュアル「鈴廣流 仕事の仕方」を配布。社内の昇格時の研修でテキストとして使っている。リーダーシップ、書き方、話し方、仕事のマナーなどを網羅し、社員としての振る舞い方を示す。昇格時以外にも、課長や役員を目指す社員を対象とした研修を行い、経営の考え方などを伝えている。
 
悌介氏は就職活動で同社を訪問する学生に対し「『うちの会社は全部ダメ。いいところがあるとすればダメなことを知っていること』と言っている」と現状に満足しないという姿勢を訴える。先人の思いを次代につなぐため、日々の仕事のあり方を問い続けている。

企業概要

1865年(慶応元)に小田原で網元として魚商を営んでいた4代目村田屋権右衛門が、副業としてかまぼこの製造を手がけたのが始まり。その後、鈴木姓に改姓する。1962年、神奈川県小田原市の町中にあった本社・工場を同市風祭に移転。以後、ここを拠点として「かまぼこ博物館」や土産物店、レストランなどを開設。「鈴廣かまぼこの里」として多くの観光客を迎えている。使用する調味料や着色料の天然素材化をほぼ全てのかまぼこ製品で実現。保存料は使っていない。


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