「不変と革新」

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「善の巡環」世界に広げる

会長を囲み企業精神や経営理念についての対話に力を入れる
「当社だけに優先的にファスナーを供給してほしい」―。YKKには競合先を意識した取引先からこうした依頼が多くあるという。相手先は大手スポーツ用品メーカーやアパレルメーカーなど、世界的な有名企業ばかり。しかし、吉田忠裕会長はこうした要請に対し「ありがたいお話だが、それはYKKだけでなく、顧客にとってもリスクを伴う」と距離を取る。万が一突発的なできごとでファスナーの供給が止まれば、取引先の製品の完成時期が遅れ、ひいては最終顧客にも影響が出るためだ。

三つの概念

「他人の利益を測らずして自らの繁栄はない」―。創業者である吉田忠雄氏が説いた精神は、YKKの中で脈々と受け継がれている。
 
ファスナーで世界にその名を知られる名門企業。用途は衣類に始まり、化学防護服、ダイビングスーツや宇宙服まで多岐にわたる。海外進出も早く、1959年のニュージーランドを筆頭に世界70以上の国・地域に進出。グローバルビジネスを展開している。
 
間もなく創業80年を迎える同社を支えてきたのは「善の巡環」「更なるコーポレートバリューを求める」「コア・バリュー」の三つの概念だ。
 
中でも創業者・吉田忠雄氏が考案した「善の巡環」はYKKの企業理念として受け継がれる。企業を社会の構成員と位置付け、「事業活動で価値を生み出すことが取引先、最終顧客、そして社会の繁栄に結びつく」という循環論を説いたものだ。どんな時代が来ても変わることのないものと位置付けている。

変化にも順応

一方で時代や状況の変化に順応し、新しい考えや行動様式を生むする柔軟さも持ち合わす。吉田忠裕会長が2代目社長に就任後、掲げたのが経営理念「更なるコーポレートバリューを求めてだ。「善の巡環」を実際の行動で示す時に、経営の使命や方向性などを表現した。吉田会長は理念を通じ、社会や顧客、従業員などステークホルダーに対し、経営や技術、商品を通じて価値を提供することを重視した。さらにこの経営理念から従業員らも策定のプロセスに関わって生まれたのが「コア・バリュー」。吉田忠雄氏の生誕100年を前に、YKKの強さについて従業員1万5000人に聞き取ってまとめた。
 
抽出したキーワードは「社員」「顧客」「社会」。解釈については様々。例えば「社員」でいえば、「絶えざる挑戦を通じた人づくり」とのフレーズがあるのみで、従業員個々の環境や体験によって解釈は変わる。

内外拠点で対話

そこで、同社が力を入れるのが精神や理念の普及活動だ。吉田会長らトップ自らが国内外の拠点に赴き、従業員らと精神や理念について対話を重ねている。「実体験や日頃の疑問について、理念に照らし合わせて、10人超で囲んで対話する」(吉田会長)。特に海外拠点でもこの対話への関心は高という。今では海外出張時に「従業員からの質問攻めにあう」ほどだ。同社の理念や精神は時代を貫き、世界に広がっていく。

企業概要

創業は1934年。吉田忠雄氏が当時の勤務先の貿易会社からファスナー事業を受け継ぎ、東京・日本橋でサンエス商会を立ち上げたのが始まり。戦後、吉田工業を設立。ファスナーのいち早い生産自動化の必要性を認識し、50年に米国からファスナーの自動製造機であるチェーンマシンを導入し、発展の基礎を築いた。60年代から本格的に海外進出。現在までに「YKK」という商標を世界170カ国・地域で登録。国連加盟数の約9割にも及んでいる。


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