「不変と革新」

セイコーエプソン

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「創造と挑戦」で世界初次々と

創業者の「誠実努力」の言葉を書いた碑。創業の地に立てられている
「水は上から流すと障害物があっても下へ流れる。水が流れる方向はぶれない」。セイコーエプソンの碓井稔社長はこう社員に語りかける。社長と社員の経営理念対話会で碓井社長は水の話をする。「経営理念を理解できていれば、社員が進む方向もぶれない」という思いがあるからだ。対話会は経営理念の浸透活動として2009年度から始めた。部門長、部長、課長級を対象にこれまで150回以上開き、2000人近くが参加した。

自由闊達な社風

同社は2012年に創業70周年を迎えた。しかし「いままで経営理念が浸透していなかった」(碓井社長)と打ち明ける。そもそも経営理念の制定は89年で、創業から半世紀は経営理念を明文化していなかった。代わりに「創造と挑戦」という精神を受け継いできた。自由闊達(かったつ)な社風を生み、機械式時計、小型軽量プリンター、クオーツウオッチと次々に日本初、世界初の商品を開発した。
 
しかし「『創造と挑戦』だけだと好きなことをやってしまう」(同)という弊害があらわれた。誰のために新商品を開発するのかわからず、顧客のメリットも考えないまま機能向上に挑戦していた。ついつい「競合の製品よりも優れていることを追求していた」(同)と反省する。

共通のゴール

市場を見ると先進国でプリンターの需要が一巡し、大きな成長が見込めなくなった。同社も構造改革を経験するなど事業環境が変わる中で「何となく一人ひとりががんばるだけでは通用しなくなった」(同)。共通のゴールがないと社員の力は分散する。社員を同じ方向に向け、総合力を高めるために経営理念に立ち返ることにした。

「驚きと感動」

「お客様を大切に」、「常に創造し挑戦していることを誇りとしたい」。経営理念に顧客重視を明確に記した。ブランドメッセージに込めた思いにも「お客様に驚きや感動をもたらす」と宣言している。ゴールは明確で「お客さまに驚きと感動を与えられる商品を出す」ことだ。前身の大和工業(42年創業)の創業者は顧客に向き合う姿勢を誠実と表現し、「誠実努力」という言葉を残した。再認識したゴールは創業時への原点回帰を意味する。

対話会では「経営理念を読み解く」と題した教科書を使い、どういう行動が経営理念に合致するか話し合う。「行動に迷った時もゴールが判断基準になる」(同)と力説する。
 
すでに成果が出ている。エプソンは12年秋、従来機のほぼ半分に小型化した家庭用プリンターを発売した。競合と競った結果のわずかな小型化だと消費者は気づかない。ほぼ半減だと見ただけで圧倒的な小ささがわかる。置き場の制約も少なくなるため消費者もメリットを感じられる。「驚きと感動」をゴールとしたことで大幅な小型化に成功した。「これから成果が大きくなっていく」(同)と理念浸透活動の手応えを語る。

企業概要

服部時計店現(セイコーホールディングス)にでっち奉公した山崎久夫氏が42年に創業した大和工業が前身。「セイコー」ブランドの時計を生産する諏訪精工舎と、プリンターを生産するエプソンが85年に合併して現社名に。家庭用プリンター「カラリオ」、プロジェクターなど情報関連機器が売上高の80%を占める。次に電子部品が多く、時計は数%。ロボットなどの産業機械、センサーを使った健康関連を新規事業として育成している。


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