「不変と革新」

ナベヤ

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時流適応、挑戦続ける

江戸時代に朝廷から与えられた御鋳物師の免状(複製)

1560年の創業以来453年間、鋳物業を守り続けてきたナベヤ(岐阜市)に明文化した企業理念はない。あるのは時代の変化に合わせて常に新たな主力製品を育て、業態を変えてきた遺伝子だ。江戸時代までは朝廷から許可を得た「御鋳物師」として釣り鐘や仏像などを製造してきた。明治時代以降は鍋や釜、戦後は木炭アイロンや家庭用万力、自動車用ジャッキなどを主力としたが、いずれも現在は生産していない。

せいぜい30年

「他社と同じものを作ってはいけない」。15代目の社長を務めた岡本太右衛門会長は言う。現在の主力は約7500アイテムに及ぶ標準治具やマシンバイスと、約5800アイテムある機械要素部品。岡本会長は「商品の寿命はせいぜい30年」との思いを胸に、新市場を開拓してきた。
 
16代目に当たる岡本知彦社長も「時流適応」を唱え、鋳物に軸足を置きつつ、さらに業態転換を進める考えだ。このためメカニカルパーツなどの高付加価値製品を強化。糸貫FA工場(岐阜県本巣市)を核にトヨタ生産方式やデジタルエンジニアリングも推進している。

堅実さも大切

柔軟でチャレンジ精神あふれる企業風土を保ちながら、堅実さも大切にしている。「楽してもうけると長くは続かない」と岡本会長。その根幹となるのがオーナーの岡本家に伝わる家訓。「政治に関わるな」「遊興の事業に手を出さない」「番頭を大切にする」の三つをかたくなに守る。
 
本社を置く岐阜市で岡本家は名士。今も社長、会長はさまざまな公職を頼まれる。しかし政治家とは一定の距離を保つよう明治時代から言い伝えられてきた。飲食や遊技関連などの事業に手を出さないのは、事業として夢中になるうちに経営者自身が遊興におぼれるのを避ける意味もある。
 
グループ各社には「番頭」格である常務級の役員を置き、グループを束ねる岡本社長の経営を補佐する。後任の番頭を育てるのも番頭の仕事だ。毎年12月1日にはグループ企業の番頭格全員を岡本家全員で接待する「恵比須(えびす)講」と呼ぶ年中行事があるほど大切にしている。

永続の不文律

三つの家訓のほかに、岡本家にはさらにグループ永続のための不文律がある。一つは兄弟同士で会社を継がせないこと。「兄弟で仲が良くてもその息子たち、孫たちの世代まで良いとは限らない。仲がこじれれば経営に響く」(岡本会長)からだ。これまで岡本家では兄弟がいる場合は事業の一部を分社し、新たに事業を始めさせてきた。
 
さらに岡本家の人たちにも厳しい規範を課す。それが「毎年の岡本家としての決算」(同)だ。企業同様に家計の損益計算書、貸借対照表を作成する。
 
「オーナー家の財産管理がおかしくなると会社の経営にも影響する。たとえ会社のために良かれと思っても、勝手な行動は許されない」(同)と無理な投資や浪費を戒める。ここにも長きにわたる歴史を支える堅実ぶりが表れている。

企業概要

岡本伊左右衛門が井口城(現岐阜城)下で鋳物業を始めたとの記録が残る1560年(永禄3年)を創業の年とする。現在は精密治具や精密マシンバイス、除振・防振エレメントや各種機械部品を主力とする。資本金は9800万円で、従業員は160人。素材から精密加工までの一貫体制をとる。シンガポールと中国・上海市の販売会社、上下水道用資材の鋳造品を手掛ける岡本(岐阜市)や精密治具・工具、精密加工を手掛けるナベヤ精機(岐阜県各務原市)など8社でグループをなす。


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