「不変と革新」

田代珈琲

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コーヒーを軸に人育て

本社1階の店舗内には焙煎機が並び、コーヒーの香りが満ちている

 スペシャルティコーヒーとは「カップ一杯に際だった風味特性のあるコーヒー」のことだ。田代珈琲は、この10数年間で、卸売り主体から高付加価値商品のスペシャルティコーヒーに特化した小売り主体の業態に転換した。

値下げ合戦

 1933年に田代辰(のぼる)氏がシロップ製造の田代兄弟商会として大阪で創業。来年、80年周年を迎える。戦後にコーヒー豆と紅茶の卸業を始め、54年に社名を田代珈琲に変更した。

 三代目の田代和弘社長が家業を継いだのは94年、29歳の時だ。当時、バブル崩壊による国内景気の落ち込みが響き、取引先である喫茶店は減少傾向にあった。売上高の6―7割を卸売りが占めていたが、田代社長は「同じ商社から豆を仕入れている競合他社と、値下げ合戦を続けることに嫌気がさしていた」。

リピート60%

 そんな折、田代社長はニカラグアの国際品評会で選ばれたスペシャルティコーヒーに出会った。「相場で大量に取引されているコーヒーとは、まったく次元が違う。こんなコーヒーをやりたい」。そう思った田代社長は、国内屈指のコーヒーコンサルタントに師事し、豆の生産工程、味を見極めるカッピングの方法などを学んだ。

 ニカラグア、ホンジュラスなどの生産地に足を運び、産地情報を収集した。03年頃、利益の柱だった「ブルーマウンテン」と「ロブスタ種」の取り扱いをやめ、東大阪市内で展開していた支店もすべて閉じた。これは本当においしいコーヒーで勝負するという決意だった。

 現在はスペシャルティコーヒーに特化。受注分だけを焙煎(ばいせん)し、翌日に届けている。リピート注文率は60%。品質へのこだわりが価値として顧客に伝わった結果だ。売り上げの7割をインターネット販売が占める小売業への転換も果たした。

成長のために

 そして田代社長は今、「成長し続け、社会に必要とされる企業でありたい」と願っている。それを支えるのは人材。10年から新卒採用を開始し、この3年間で正社員数を2倍の人に増やした。田代社長は「生産性を向上し、他社よりも良い商品をつくるためには、会社は人が本気で働ける場でなければならない」と言い切る。こうした場で人が育った結果、企業も成長すると信じているからだ。

 このため人材評価制度でも「スキルや知識を人に指導できる」ことを最も高く評価している。自らも国際品評会の審査員を務めているほか、業界の検定制度の策定にも関わっている。

 田代社長が目指している企業像。それは”コーヒーを軸とした人育て企業”だ。


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