「不変と革新」

福田刃物工業

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製品は良心の反映なり

大正時代の工場。左から2人目が創業者の福田吉蔵氏

工業用刃物メーカーの福田刃物工業(岐阜県関市、0575・28・5888)は、100%正社員でノルマなし。60人前後の小規模だが、ここ5年間で中途退職は一人もいない。福田英資社長は社風について「のんびり」と表現する。それでいて高収益。2011年12月期は売上高10億円で、営業利益率は7%だ。

精神受け継ぐ

 創業は1896年(明29)。今年、創業116年目を迎えた。日本人の服装が着物から洋服に変わる中、刃物職人だった福田吉蔵が独立し、ポケットナイフの生産を始めた。さらに吉蔵は1921年(大10)、海外製が当たり前だった紙裁断包丁を製品化。工業用刃物に事業を転換し、社業の素地を築いた。

 「製品は良心の反映なり」。吉蔵の言葉だ。孫に当たる4代目の福田社長も「作るものには効率ではなく、誠意を込めたい」と、この精神を受け継ぐ。分業体制が発達した関の刃物業界にあって切削、研磨から熱処理・ろう付けまでの一貫生産を変えようとしないのもその表れだ。

一品モノ提案

 技能伝承は一貫生産の要。しかし、特別な教育制度はない。しかも「入社以来年、怒鳴られた記憶がない」(福田社長)。それでいて「惜しみなく若い人に教える」(同)という伝統がある。

 顧客は製本・紙工・製紙からゴム・樹脂加工、鉄工加工、食品加工までさまざま。多くても5枚単位という受注生産は形状も多岐にわたる。顧客の設計図を基に最適な形状を提案する。この技術力はまさに「長年の蓄積の賜(たまもの)」(福田克則専務)だ。

 一品モノの最適な刃物を提案するには、顧客からの綿密な聞き取りも欠かせない。一貫生産と同様に重視しているのが、営業体制。社員67人中、11人の営業担当を抱えている。さらに一人増員予定だ。ノルマを課さず、顧客の要望をじっくりと聞くスタイルを貫いている。価格競争はしない主義だ。

 近年はPETボトルをはじめとする廃棄物リサイクル向け粉砕用刃物が伸びている。一貫生産設備、蓄積した技術、じっくりと要望を聞き出す営業・・・、「このすべてをまねできるライバルは少ない」。福田専務は好調の理由をこう分析する。12年12月期は前年度比約1割の増収を見込んでいる。

自然体で

 刃物業界でも海外製品との競争は激化している。しかし、福田社長は「モノの形を変えるための刃物は絶対に無くならない。最後の砦(とりで)になっても国産にこだわる」と言い切る。

 「『絶対に誠心誠意』ではないが、できれば今後も誠実であり続けたい」。こう笑顔をみせる福田社長の自然体の軽やかさが、逆に100年の重みを伝えている。


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